天下人をて!! - 雑賀孫一と雑賀・根来衆 -  




 平成23年1月。まだまだ衰退する様子がなく、加熱一方の戦国時代ブームの真っ只中。
 その流行の最先端を走るけん引役となるであろう一大メディアである、歴史大河ドラマ『
』が華々しく幕を開きました。

 初回視聴率は21.7%と、平成22年に幕末ブームを巻き起こした『龍馬伝』に比較するとやや大人しいめのスタートとなりましたが、一年振りの戦国大河がどこまで巻き返すか。

 そして、今回の大河では戦国時代の看板役者ともいうべきあの大物武将・織田信長が登場、名優・豊川悦史さんが好演されています。第一話を視聴された皆様も、その充分過ぎるほどの存在感には心惹かれたかたは多かったことでしょう。


 そんな中世最大の天才・織田信長を象徴するものと言えば…革新的な思考や見る者の胸を躍らせる大決断、驚くべき機動力…そして、その軍事力を支えた近代兵器の一大傑作・『
縄銃』に尽きるのではないでしょうか。



 しかし、そんな織田信長最大の兵器・火縄銃は何も彼の専売特許ではありません。

 たしかに、多くても数十挺単位だった合戦での鉄砲装備を千挺単位まで持ち上げたのは信長や秀吉かも知れませんが…。


 そんな天下人達に向こうをうって戦った数多くの好敵手達のなかにも、火縄銃を頼りにした人達はたくさん居ました。


 それに、戦国時代が信長・秀吉・家康の三人によって幕を引かれたのは、何も彼らの才覚ばかりが働いたわけではありません。

 槍や弓矢のような鍛錬が要らず、銃爪を引くだけで戦況を大いに変えることが出来た新兵器・火縄銃の大量流通は少なからぬ影響を与え、三人の命運を大きく変えていったのです。


 今日は、そんな火縄銃の可能性を信じ、それを手にすることによって戦国の天下人達と戦った凄腕の鉄砲傭兵集団である『雑賀衆』と『根来衆』、そして彼らの中でも伝説的な英雄である『雑賀孫一』にスポットを当て、彼らにまつわるゆかりの地を巡っていく企画を立案いたしました。

 名づけて、『天下人を撃て!!〜雑賀孫一と雑賀・根来衆』。

 戦国の覇者・織田信長の攻撃を退かせ、太閤秀吉に辛酸を嘗めさせた鉄砲傭兵達の素顔に迫っていきたいと思います。

 残念ながら、今回は企画立案・実行の拙さゆえに『ほぼ日帰り』の日程となってしまった為、長宗我部元親の時のような併立企画はありませんが…初回はやや発火不良気味だった歴史大河『江』同様、そのハンディを盛り返す勢いで四国徳島を飛び出します。

 果たして、戦国時代屈指の鉄砲傭兵集団の素顔やいかに?

 それでは企画『天下人を撃て!!〜雑賀孫一と雑賀・根来衆』のスタートです。




【平成23年1月1日頃】
 れきたん。の歴史散歩企画『阿波平島公方』篇をUp。

次回はいよいよ二泊二日の歴史紀行企画『江姫が愛した父親達 〜浅井長政・柴田勝家慕情録』。

今年大河の主役『江姫』にとって父親にあたる浅井長政・柴田勝家ゆかりの地を訪問する旅をうすぼんやりと想定し、観光場所やルートなどを調査、あいまいな青写真を描きます。

 予定は1月7日夜から1月9日までの三日間。

 筆者の歴史探訪は、まずこの『なんとなく』という頼りにならないインスピレイションから始まる、のですが…。これが後に、あるちょっとした騒動の種をまくことになりました。


 当然、まだ本人はその種に気づいて居ません。






 日勤業務が終了、渋滞しがちの長い長い退勤ルートを辿り…そして自宅に到着します。

 勘の良い人ならこの時、この夕暮れ時の外気に触れれば『南国阿波らしからぬ、異様な現象』に気づくのですが…そこは勘の良くない筆者のこと、まだ気がつきません。

 頭の中は、明日以降の予定や準備のことでいっぱいです…。




 一緒に旅をするホンダ・ステップワゴンの最終調整。

 破損修理中だったリアスポイラーを取り付け、エンジンオイル・ブレーキオイル・ラジエーター水などを確認。

 後は三日間の着替えや寝具、ノートパソコンなどの備品を取り揃え、出発予定時刻の20時を待つだけだったのですが…。

 ここで筆者、ようやく今の異常に気がつきます。



『…――なんだか、
    いやに寒くないか…今日。』








 なにせ四国阿波は暖かい土地柄。

 昨年の初頭も日本は異常寒波に見舞われ、北部の各県では雪かきに追われたと聞いていますが…私の記憶が確かなら、ここ十年間強、鳴門市や徳島市では路面が凍結することはあっても通行止めになるような大雪は、記憶が正しければ降っていないはず。

 ですから、冬場に旅行に行くときは当然、考慮されるべき…『そのこと』に、まったく気づいていない状態だったのです。

 そこへ、勤務が早めに終わって戻ってきた筆者の兄こと『鉄人36号』と遭遇。


 36号は仕事の都合で日本全土を飛び回っているため、ある意味我が家で一番の旅行通。


 周防長門が滋賀・福井県へ今夜遅くに出発することも当然、知っていたのですが…ここで、36号の口から思わぬ言動…『騒動の種、異変、そのこと…etsの、答え合わせ』が飛び出すのです!!



『…――車の整備、頑張ってるみたいだけど…。
 明日明後日、寒気の影響で、滋賀や福井は雪が降るらしいぞ。





……―――はぃ?
 (ドラマ『相棒』の杉下右京警部補風の発音で)




 日本の冬は寒いんです、これが常識。

 1月と言えば雪が降るのは当たり前のこと。…なのですが、何せ降雪は見ても積雪はここしばらく見た記憶がない、そんなお気楽な南国風土の恩恵を受け続けて居た筆者には、まさか
この季節に『滋賀県で雪が降る』とは考えても居ません。


 当然、積雪のある路面を車で、しかも今まで乗ってきた車とは車体重量が段違いであるホンダ・ステップワゴンで運転するなど経験もなければ、対策を経験した記憶もまったくありません。


『…――まぁ、15インチタイヤ用のチェーンか、スタッドレスタイヤが二本もあれば大丈夫だろうけど…それも雪がどう降ってるかによるかな。
 
阪神高速とかは田舎の高速と違って道が良いから、通行止めにはならないだろうし。』





チェーン、巻いたことない。…っていうか、スタッドレスタイヤって何?」




『…――ん?
 …―─今、お前…何て言った?(汗』





何か変なこと言った?…あと、高速道路って…雪が降ったら通行止めになるの?





『…インターネットで確認してみよう、な?(・(ェ,,)・;)
 このままだとお前、どこかの高速道路上で絶対、スピードスケートすることになるぞ。』






■こんな時に役に立つのが文明の利器・インターネット。

 今回はNEXCO東日本による高速道路情報日本各地の降雪・積雪情報をリアルタイムで提示している『ユキイロ.com

 そして、それよりもっとリアルタイム…各都道府県に設置されたライブカメラ映像を閲覧することで、今夜出向く予定だった滋賀県…そして福井県の情報を調査します。


■…これらの情報に加え、に気象庁ホームページの今日現在の天気・および週間天気予報を調査。その結果…。

 …――日本地図の半分に、ゆきだるまマークがついていました。





 どうやら、この日は寒波の影響が日本海側へもろに出たらしく…福井県はもちろんのこと、滋賀県の琵琶湖南岸や京都府、兵庫県にまで降雪の可能性が指摘されていました。

 しかも、18時現在で近畿各地の気温は軒並み0度前後、22時頃には揃ってマイナス気温と予想が出ています。

 22時…これは阿波徳島から京都へ出るのに約3時間という経過を考えれば、ちょうど筆者が高速道路上を走っている時間帯になります。


 
また、Nexcoの高速道路情報では、福井県を含む北陸へとつながる高速道ではほぼ全域で、チェーン規制が行われているのを確認。

 また、ユキイロ.comでは兵庫県の湾岸道路や京都府付近でも降雪が確認。

 ライブカメラには、やや不鮮明ながらも既に高速道路上に薄い積雪を見ることが出来ました。


 この状況で気温が零下になれば、確実にアイスバーンです。




 …――あやうく、阪神高速道路で清水宏保選手の記録に挑戦するところでした。



 こうなっては、冬の道路慣れしていない筆者は白旗を振るより他ありません。

 少なくとも、今夜からの滋賀県への出発は不可能になり…今回の企画で重要な意味のある『福井県』への旅程がこの時点でほぼ絶望的になりました。







 
さぁ、困ったのは筆者です。

 せっかく職場に迷惑を掛けて週末を占拠し休みをとった以上、この日を置いて他に企画取材に出かけられる日はありません。

 そこで急遽、浅井・柴田企画はいったんお蔵入りにして、新たな新規旅行計画を立てることにしました。



 時間は刻一刻と過ぎていきます。早く新規計画を立案しなければなりません。

…今のところ、腹案として抱えている企画の青写真は『安芸広島の毛利元就案』、『関ヶ原合戦を一日掛けて検証する案』、そしてなんとなく考えていた『雑賀衆・雑賀孫一ゆかりの地をめぐる案』のみっつ。



 まず毛利元就案ですが、これは明日明後日…一泊二日で巡るには無理がある企画。

 もとより遊休資産の乏しい筆者には、もっともらしいルートも考えずに広島県というのはいささか不安を覚える案でした。即座に却下。


 次が関ヶ原古戦場の検証案ですが…ご存知の通り関ヶ原は滋賀-岐阜県の境界。現時点でこれだけの降雪が予想されるなら、まず到着が出来ないでしょう。これも却下。





 残るは、『雑賀孫一案』だけです。紀伊和歌山にさまざまな伝承を残す伝説の鉄砲傭兵集団・雑賀衆を訪ね、その歴史の軌跡を追う企画。


 これも阪神高速道路を通らなければいけない都合、かなりの至難が予想されますが…

 
とにかく、阪和道まで突破出来れば雪の可能性はほぼ無くなります。もし、帰り道で道路状況に影響が出るなら…鼻血が出そうなほどの出費ですが、徳島-和歌山間をつないでいるフェリー航路で帰ることも出来ます。

 これしか無さそうだ。筆者は明日昼間の出発を目指して、睡眠時間を削って企画立案のための情報収集に奔走することになります…。




 起床。昨夜の突貫工事による夜更かしが祟ったのか、やや遅い起床となりました。

即座にユキイロ・Nexco・ライブカメラなどを利用して阪神高速道路の周辺状況を確認して…今現在は特に問題がないことを把握します。

 後は、最終調整…企画『雑賀孫一』の細かいカーナビルートや立ち寄り先の電話番号、詳細な住所などを記録。

 立ち寄り先の電話番号は、カーナビが名称検索では思い出せない所を検索したり、最悪の場合電話確認するため役に立つ。困ったときは他人に聞く、これ簡単なことで重要。




■すべての調査・前準備を終了、ついに企画『天下人を撃て!!』紀行計画が発動することに。


 …既に予定は半日以上押して居て、今から出かけても…和歌山県をいろいろ見て回れるのは事実上、明日の朝から日没までの半日足らず。

――そして、現時点での徳島県はどんよりとした曇り空。

 …しかし、それでも行くしかありません。全国の女子高校生の皆さんのため…もとい、『れきたん。』を楽しみにされている御贔屓さんのため。

 果たして、筆者は降雪・積雪、路面凍結など冬の障害に巻き込まれることなく、無事目的地の和歌山県へと辿り着けるのでしょうか!?



【平成23年1月8日 AM16:30頃】
徳島自動車道・板野Icから、神戸淡路鳴門道へ。

 後はこのまま垂水Jctまで道なりに突き進んでいくだけですが…――車窓から流れ込む外気は冷たく、空の鉛色は一向に晴れる気配がありません。



 そして、緑PAを過ぎたまもなくのところで…ついにおそれていた事態が発生。


 雪が… 雪が、降ってきたのです!!!





天下人を撃て!!〜雑賀孫一と雑賀・根来衆〜【中編】





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