2011年大河 -姫たちの戦国-』   - 第十二回 茶々の反乱 -

それでは今回も一週間遅れで大河『江』の第十二話『茶々の反乱』、感想と歴史痛的補説の開始です。前回は父母の死後、悲哀を振り切れずに心揺れる様を三者三様に見せつけ、悪の親玉(笑)秀吉はお市様を取り逃した悔しさもなんのその、即効で茶々に目をつけていましたが…さてさて、今回はどんな展開になるのやら。
(;=(,,ェ)=)あと江の横暴は今回も炸裂するのか。



■江(上野樹里)ら三姉妹with羽柴秀吉(岸谷五朗)
 幼子の髪結いをしなくなって、史実の年齢差ギャップは感じなくなりましたが…物語の筋道は相変わらず何と言うか、ファンタジーというか漫画ちっくな展開は相変わらずの模様で。衣装の云々はまだ、秀吉の策略という意味ではわかる気がしなくもありませんが…えと、その…何だ。(;=(,,ェ)=)

 …―――先週まで母親のことを思ってた娘が、仇敵の恩義を受けないために食を絶っているというのに…それを見た秀吉が『廊下の縁側で蛤を焼いて食欲を釣る』作戦を思いつくとか、幾らコミカル場面でもやっちゃいかんだろうって思うんですよ。本当にノリが下手なアニメな大河ドラマだ─…(;-(,,ェ)-)


 同じ『時代考証ぶっちぎり』というジャンルでも、江にやたらめったら暴力を振るわれ傍若無人に振舞われても平伏してばかりの秀吉の表情だと、そんな不愉快は感じないんですよね。嫁入りです!!と宣言しておいて初が『私?』と聞いた途端…  …ぶるる。 とかは最高におかしい瞬間だったです。


 あと、『さにあらず。』とつぶやく秀吉の顔が、07年大河『風林火山』の太原雪斎(伊武雅刀)とまったく同じ雰囲気…見てて心地よいうさんくささを醸している。うん、やっぱりこのドラマの醍醐味は、江の無法に耐える秀吉の邪知と悪い顔なんですよ!!


 …これは、えこひいきなんでしょうか私の。…――いや、多分違う気がします…(苦笑。
 


 ですが、今回は秀吉の道化師っぷり以上に初の馬鹿さ加減が心を掠めていきました。

 茶々と江のキャラクターは、今後も重要になっていくためしっかりとして当然だとは思いますが…その、何でしょう…――あれでは、初はただの痛い子の様な気がするんですが。まぁ、三人が三人ともしっかりした三姉妹では話の抑揚がつかないのは判るんですが、加減っていうか悪乗りは過ぎると冗談にはならないっていうか。(;-(,,ェ)-)

 あと、江が秀吉に居丈高な態度で応じても秀吉が噛みつかないのは『江の面影に織田信長を見るから』という描写がありますが、二度も三度も使われるとそれはそれでどうなのかという気もします。

 戦国歴史大河ドラマで織田信長が主役で無い場合、織田信長が退場すると視聴率が落ちるなどというジンクスもありますが…――それを計算に入れているにしても、幾らかつての主君の娘とはいえ…大の男の顔を引っ掻いておいて『毎回、信長の幻想に怯える』のでは戦国武将の沽券も誇りもあったものじゃないような…。(ll=(,,ェ)=)

 しかし、話の終盤になって秀吉は江を厄介払いする最良の方法を思いつきました。あの邪悪で心地よい笑顔が、初のおばかさん加減による胸のモヤモヤをスッキリさせてくれます。あの秀吉のキャラクターを活かすために、黒田官兵衛や石田三成の個性が弱くなっているとすれば、これは脚色の妙かも知れません。( ・(,,ェ)・)oO(認めたくはないですが。)


 姉を守ると胸に誓った信長のオーラをまとう三女と天下の覇者に王手をかけた狡猾な猿面冠者の対決、他の脚色は色々と気になりますが…――うん、楽しみになってきました。


【大河『江』歴史物語 〜物語に隠された裏事情〜】

■徳川家康の憂鬱〜死んだ信康と魚顔の於義丸

 さて、今回の終盤…いよいよ秀吉との合戦が避けられない情勢になった徳川家の面々が登場しましたが…血気盛んになる家中を他所に、家康はちょっと浮かない顔でした。

 かつて信長の命を受けて自ら処断した長男・信康の顔を思い出して…――勇敢で体も大きな次男・於義丸の顔を見て、なにやら醒めた顔。



 秀吉と違って子宝に恵まれた家康ですが、あんな頼もしそうな次男と利発な三男に恵まれながら…――何をしょんぼりとしていたんでしょう?


 実は家康、あんまりこの次男には良い想い出が無いんです。


 於義丸は1574年(天正二年)、徳川家康の次男として生まれたのですが…―母親は誰かと言えば、よりにもよって家康の正室・築山殿の侍女だった女性。


 湯殿で汗を流していた家康の世話をしていた彼女へ衝動的に手をつけたら、その…何と、一発で命中させてしまって出来た子だったりするのです。



 築山殿は今川義元の姪で養女という気位の高い女性、侍女などという下賎な身分の娘が家康の子を生んだことに大激怒!



 その侍女を鞭打ちしたあげく縛り上げて、浜松城外の草むらに
放置したのです。


 幸い、外を巡回していた本多重次に発見され…無事に於義丸を出産したのですが…―――どうしたわけか、この赤ちゃんが奇妙に歪んでいるブサい顔だった、というです。


 つい出来心でつくってしまった赤ちゃん、しかも可愛くない…となると家康の態度も冷めたもので…於義丸という名前も『魚のギギに似ているから。』というやけに酷い理由。(ちなみにギギとはなまずの一種、淡水魚)



 なぜこんな醜悪な顔になってしまったのかは諸説ありますが、どうやら…父親の家康、もしくは母親である侍女のいずれかが梅毒に感染していたらしく、於義丸は垂直感染(母体の産道で梅毒に感染)して生を受けてしまったようです。


 正室の築山殿の怒りもあるし、つい出来心だったし、おまけに顔が醜い…父親としての愛情も薄かった家康、於義丸がかなり大きくなっても認知もしなければ顔を見ようともしませんでした。


 この、家康の冷たい態度に怒ったのが家康の長男・徳川信康。

弟の不遇に憤った信康はある日、家康が居る部屋の襖前に於義丸を連れて来ると、部屋のなかに居る家康に向かって『お父さん!!』と叫ぶように言い…その声を聞いて部屋から飛び出てきた家康を見るや、於義丸を抱いて急接近し家康の袴の裾を踏んづける!!

『父上…――この子は、私の弟で間違いないですよね?』


 この剣幕には、家康も流石に『違う!!』とも言えず…その日から、於義丸は家康の次男として認知されたのです。

 比較的気性のおとなしい、どちらかといえば武勲に恵まれない子が多かった家康の子供達のなかでも、長男信康はこの通り気丈夫で勇敢な性格。次代の徳川家を背負って立つ英傑であった嫡男でした。

 その期待していた嫡男も今となっては鬼籍に入り、疎ましく思っている次男がすくすくと、しかも体格が良く気概のある戦国武将の卵になりつつある。

 家康がため息をついてるのに共感出来る、という方は結構いらっしゃるんじゃないでしょうか…。
 



■ さて、今回もリベラルを装った歴史痛視点(蹴)での感想でしたが…いかがだったでしょうか。

 次回予告では、今回終盤の『秀吉、江に嫁入り宣言』というカードを受けて色んな人達の思惑が交錯する場面が期待大。江の覚悟を受け取れとの言葉に真剣な顔をする茶々、そして姉の身と心を守りぬく誓いを思わぬ格好で遮断されることになった江。

 三姉妹の今後を見舞う新たな歴史の展開とはどういったものなのか。輿に揺られながらも笑顔で手を振る江、その心意気の移り変わりは今から期待大です。

2011年大河『江』第十三回 花嫁の決意 感想と解説





■前に戻る    トップへ戻る