2011年大河 -姫たちの戦国-』   - 第十三回 花嫁の決意 -

■第十三回の視聴率は16.6%でした。『20%割ってる、調子悪い!!』という評価もありますが

先週の視
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/top10.htm

 『大河にしちゃ低い』とは毎週言われ続けてることですが、こうして比較してみるとさすがはNHKの底力、民法の苦戦ぶりをみると結構高いことがわかりますね。


 大河『独眼竜政宗』の絶好調や『8時だョ!全員集合』『俺たちひょうきん族』などのおばけ番組があったのも、もう三十年近く前。平成の現代と比較すると娯楽の幅やモラルがおおらかな時代のこと。

 20%越えなきゃ大河じゃない、っていう雰囲気でも無いような気もしてきます。脚本家の田渕さんが言うとおり、昔ながらの歴史をトレースするだけの堅苦しい大河は受けないのかもしれません。

 …―――それでも、頭の硬い歴史痛である赤髭は『一話あたり6〜7千万も掛けてファンタジーしなくっても、とかいう愚痴が頭を離れないわけですが。( =(,,ェ)=)


 ■ さて、それでは気をとりなおして…今回も一週間遅れで大河『江』の第十三話『花嫁の決意』、感想と歴史痛的補説の開始です。
 
 前回は秀吉による謀略劇で、12歳にして嫁入りを宣告された江。これでうざったい三の姫様+織田信長の亡霊に悩まされずに済む、と秀吉は上機嫌かも知れませんが…おそらくこれには三姉妹は当然、他の影響も大きいはず。はてさて、今週はどういった展開になるのやら…。( -(,,ェ)-)


■羽柴秀吉(岸谷五朗)withおね (大竹しのぶ)+石田三成(萩原聖人)

 ・・・――よし、今後大河『江』を視聴する上でのとっかかりは、やっぱり秀吉の黒さだ(何。( -(,,ェ)-)

 名優・岸谷さんが小気味よく演じる、知恵の回る悪い猿面冠者。あの、全然嘘ってわかる表情で『信長が夢枕に立ち申した。嘘偽りは申しません』とうそぶく顔や、長年連れ添った正室、おねに怒鳴り散らされて怯むところなど、痛快な出世物語と人情味あふれる英雄振りが板についていた感のある羽柴秀吉像とはかけ離れすぎています。

 しかし、そのかけ離れ過ぎた猿知恵のまわる小悪党ぶりが新鮮で良いのですよ。


『ショウチイタシマシテゴザリマスル( ・(,,ェ)・)


 とか、どの面と思惑下げていってるんだというあの表情、全然知恵者っぽくない石田三成や黒田官兵衛といった周囲の家臣達の頼りなさもあいまって、秀吉の悪知恵と性格の黒さが引き立ちます。ちょろっとでも良い顔見せてくれるのかと思いきや、全然そういう気配がないのも返って心地よく。( -(,,ェ)-)oO( 半端な悪党されると返って萎えますからねえ )


 今後、戦国時代一の出世頭として天下人の階段を駆け上っていくにつれてますます俗物+わがままになっていく秀吉ですが・・・三姉妹にとってどういうキャラクターに仕上がっていくのか。今の岸谷さん秀吉が白髪+大つけ髭して、金粉まみれの大坂城で天下人としてふるまうさまを早く見てみたいですよね。( ・(,,ェ)・)

 今回はおねの存在も光りました。元祖・戦国夫婦善哉、おしどり夫婦を地で行く秀吉・おね夫妻ながら、今回はおねの怒りが大爆発!!最後の最後に、江を外交の手駒に使っていながら呆気なく開戦に踏み切った秀吉にパーじゃなくてグーの右フックをお見舞いしたシーン、あれには胸のすくような爽快感を覚えた方も少なくないのではないでしょうか。

 史実でも、大名達がいる前で名古屋弁全開で夫婦喧嘩をしたり、『旦那の浮気がひどすぎる!!』と織田信長に直筆の手紙を書いたほど(これ、言ってみれば日本最大最強の企業の滋賀県支社長の奥さんが、会長にアポなしで浮気の愚痴を手紙で送ったようなものなんですよね)の豪快な奥さんだったおね。夫が天下人になるにつれ妾が増えていくという複雑な胸中の女性ではありますが、秀吉と並んで注目していきたい人物です。


【大河『江』歴史物語 〜物語に隠された裏事情〜】

■秀吉の人誑し(ひとたらし)・本領発揮!!江が嫁に行った?知らねえや。

 さて、劇中ではせっかく江が体を張って織田-羽柴間の和平ムードを執り成し、合戦を回避するため嫁にいったわけですが・・・終盤になって結局、織田家が秀吉に近い武将を三人も殺したという大義名分で開戦に踏み切っちゃいました。その直後におねの豪快な右フックが入ったわけですが・・・そりゃあ怒りもするでしょう。

 この時、織田信雄によって排除された三人の武将とは、織田三家老(おだ-さんかろう)と呼ばれた織田家の重鎮三人で、岡田重孝(おかだしげたか ????〜1584)、津川義冬(つがわよしふゆ 1545?〜1584)、そして浅井長時。(あさいながとき 田宮丸1569?〜1584 三姉妹の実父・浅井長政とは無関係、尾張の豪族)
 
 この三武将は織田家の後継者争いのレースから早々に脱落し、うだつの上がらない織田信雄を補佐した有能な武将達で、とくに岡田重孝はその才幹を秀吉にも認められていたほどの傑物。
 ちょっとした火種が飛べば即開戦!!という雰囲気、一触即発状態だった織田-羽柴間の外交調整にも尽力した忠臣でした。

 しかし、そこは前にも説明した通り謀略の達人・羽柴秀吉のこと。この三家老を味方に引き込めば織田信雄の屋台骨はがたがたになると踏み、羽柴方につくようにと勧誘をしかけ…――その引き抜き工作を、わざとばれるように風説の噂に流したのです。

 この噂を聞いて信雄が怒ったのはいうまでもありません。ここで信雄がもう少し思慮深く、年嵩がいっていれば三家老を斬るとどうなるかわかりそうなものですが…信雄は三家老をあっさりと殺害。

 秀吉は、待ってましたとばかりに織田信雄に宣戦布告をしかけ…織田家の後継者争いの第3ラウンドというべき『小牧・長久手の戦い』発端の火ぶたが切って落とされることになるのです。
 
・・・―――そりゃあ秀吉、嫁に右フックされるわ。(;-(,,ェ)-)


■江(上野樹里)with茶々(宮沢りえ)&初(水川あさみ)
 最近、この姉妹が泣いてない回を数えたら1〜2回しか残らないんじゃないのか?とか思えてきたけど、この際気にしちゃいけないです。(*-(,,ェ)-)

 姉の茶々を秀吉の魔手から逃れさせるためなら、現時点で天下人に聴牌かかった秀吉に罵倒も吐けば信長の亡霊も召喚する江ですが…秀吉に言われるまま嫁にいったかと思いきや、『姉に手を出すな』という念書一筆を得るためにあっさりと嫁入りへ。
 
 …―――この時代の誓約書や念書なんか、勝ち馬に乗れなきゃ何の意味もないんですが…信長はあまり記憶にありませんが、少なくとも豊臣秀吉と徳川家康は約束と誓紙・念書破りの達人ですし。
 ( ・(,,ェ)・)oO( まぁ、この手紙を秀吉の顔を墨まみれにしながらも書かせたということに物語の意義と重点があるのはわかりますが )


 初は初で相変わらず甘味に目がないあぱらぱーな子振りで鉄板。同時進行で07年大河『風林火山』を見ていますので、同じ水川あさみさんでも落差が激しい( -(,,ェ)-)のですが…――声聞かなかったら同一人物と思えないほど演じ分けが上手いです。


 今のところ三姉妹では狂言まわしの役があたってますが、後々彼女が三姉妹にとってもかなり重要な「ある事件」の仲介をすることになります。そのときには、このおっぺけ娘がどうなってるかが今から期待してたり。


【大河『江』歴史物語 〜物語に隠された裏事情〜】
■織田信長は娘煩悩?子女姉妹の嫁ぎ先に気を配った戦国の覇者
 さて、今回で江が嫁入りした佐治家。尾張でも古くから続く大豪族の家系で、物語中でも、信長の妹・お犬が嫁いでいたとされる親類縁者の家ですが…。

 織田家は織田信秀(信長の父親)・織田信長と二代に渡って子女が二十人以上!!という艶福家の家系。信長には名字が違う叔父がたくさんいた他、弟や妹、そして数多くの娘に恵まれました。

 こうなってくると、今回大河の冒頭にもあった通り女性たちの殆どは政略結婚の手駒として使われるわけですが…どうしたわけか織田信長、娘たちに関してはあまり積極的に外交戦略として他所へ嫁に出したようすがありません。

長女・五徳姫…鉄板の同盟関係・徳川家康の嫡男・信康と結婚。元から友好関係だった徳川家との縁を深めるための嫁入りで、信康の死後は出戻って出家。

次女・冬姫…家臣・蒲生氏郷に娶らせる。氏郷はもともと近江の豪族・蒲生家から送られてきた人質だったが、才能と器量を買われて信長の女婿となった。

三女・秀子…大和興福寺の門徒で、大和国を治めた筒井定次に嫁ぐ。これも信長の家来。

四女・永…前田利家の嫡男・前田利長に嫁ぐ。利家と信長は言わずと知れた仲。

五女・報恩院…丹羽長秀の嫡男・丹羽長重に嫁ぐ。丹羽長秀は信長にとって側近中の側近。

 他にも何人かの娘が居ますが、血のつながった娘はすべて自分の家臣か京都の公家へと嫁に出し、まったく縁もゆかりもない他所の戦国大名家に嫁いだ実娘は一人も居ません。江はそういう意味では、織田家のお姫様としては珍しく敵対関係の家へ嫁に出されたことになります。信長の意思じゃありませんが。

 敵対するものには苛烈で酷薄な第六天魔王、息子や弟たちには常々から厳しい態度をとっていた信長ですが、実は娘だけは可愛くてしかたがなかったようです。(*=(,,ェ)=)



■三介殿のなさること〜信長亡き後の織田家の人達
 さて、大河『江』では物語の歴史背景のにあまり説明の時間が割かれておらず、当時の戦国武将たちの情勢などわからないことがたくさんあり過ぎてさしもの歴史痛もよくわからないほどいくつかありますが…。

 『秀吉に滅ぼされる!!』と二言目には危惧される織田家。

 大河『江』を見る限りでは…信長が本能寺の変で滅んだあとの織田家はろくすっぽ説明もなく、いつのまにか秀吉に織田家の天下が転がり込んで来たように見えます。あの戦国の覇者・織田信長を支えた織田家一門衆はいったい何をしてるんでしょう?
 
 そこで、織田家一門衆の武将達がどんな状態だったか、ざっと列記していきます。


■嫡男・織田信忠(谷田歩)は?
 1582年、本能寺の変で二条城にあり、父の仇を討つため明智光秀軍と戦い討ち死に。

■次男・織田信雄(山崎裕太)は?
 はい、今週も登場して居ましたね。『江など佐治家にくれてやります』発言で、大多数であろう女性視聴者層を敵に回したこのおばかさんは1584年現在で27歳。

 かつて織田信長が今川義元を桶狭間に討ち取った時と同年齢になりましたが、武将としての器量はかなりよろしくなかったようです。

 信長存命中には自分の判断だけで合戦を起こした揚句にぼろ負け。怒った織田信長にお説教をされたり、秀吉の口車に乗せられて弟・織田信孝を自害においやり…そして今度は謀略とも知らずに三家老を打ち取って秀吉と一触即発。
 自分だけじゃ戦えないから徳川家康を巻き込んで小牧・長久手の合戦を起こそうとしています。

 この当時から、織田信雄の不器量は世間でも話題になっていたらしく

『三介殿(三介とは信雄の通称)のなさることは、ことごとく駄目だな ’`,、(‘∀`)’`,、

と噂になって笑われるされるほど。今後も、秀吉に対して無理な突っ張りを展開していくことになります…。

■三男・織田信孝(金井勇太)は?
 先週の話なので記憶に新しいですよね。賤ヶ岳の合戦で後ろ盾だった柴田勝家が滅ぶと、兄・織田信雄によって自害に追い込まれました。報いを待てや羽柴筑前。


■四男・織田秀勝は?
 劇中、1584年現在で17歳。子供のころに羽柴秀吉の養子となり羽柴秀勝と名乗っています。

 本能寺の変以降は明智光秀の旧領だった丹波を治めて居ますが、病弱な体質であったらしく武将としては活躍する機会はなかったようです。1586年に亡くなりますが、もう織田家にへりくだる必要もないと思ったのか、秀吉による暗殺説が死因とも。

 ( =(,,ェ)=)oO( そりゃあ信長が夢枕に立つわ。実は秀吉、本当に夢枕に信長が来たという逸話があります、悪い意味で。)


■五男・織田勝長は?
 子供のころに美濃岩村城の遠山氏へ養子に出ていましたが、養母・おつやの方(織田信長の叔母)が武田信玄に城を攻められ降伏したため、甲府の躑躅ヶ崎館で『武田信玄の養子』として暮らしていたことがある変わり種。

 武田家滅亡後は尾張に帰っていましたが、本能寺の変のさいに運悪く京都に居ました。当然巻き込まれて討死しています。合掌。


 なお、養母・おつやの方は後に織田信長に捕まり、長良川河畔で『逆さ磔の刑』という極刑に処されました。織田信長、この叔母が武田家に降伏したとき、まるで火がついたかのように大激怒したのだとか。娘には甘いがそれ以外にはとことん厳しいのが第六天魔王殿。

 おつやの方は
おのれ信長、私は女だったゆえに仕方なく降伏したというのに…おまえはロクな死に方をしないぞーーー!!!と叫びながら処刑されたそうですが…―――本当にろくな死に方しませんでしたね、信長。(il・(,,ェ)・)


■次弟・織田信包は?
 少し前まで『江』にも登場していましたが、1584年現在ではほとんど秀吉の部下同然だったようです。織田信孝や柴田勝家と仲が悪かったらしく、賤ヶ岳合戦には羽柴秀吉方に参戦していました。織田家を守るどころじゃないです。


十弟・織田長益(有楽斎)は?
 織田信長には、ざっと数えただけで十人以上の弟が居たそうですが、実力者で生き残ったのは信包とこの長益くらいのものです。この当時は長益は出家して有楽斎(うらくさい)と名乗っていました。


 『有楽町で逢いましょう』といえば故・フランク永井さんの名曲ですが、東京の有楽町の由来はこの『織田有楽斎が住んでいたから』とされていたり、

 ドラマ『君の名は』で有名になった数寄屋橋はこの有楽斎が橋の近くに数寄屋(茶室)を作ってたから、とか

…茶道の『有楽流』は織田有楽斎が開祖、ets.ets…。

 …――ともかく、その名を各所に残す織田有楽斎ですが、戦国武将としてはからっきしダメな人だったようです。( =(,,ェ)=)
 

 本能寺の変では、信長嫡男・織田信忠と一緒に居ましたが、『もはやこれまで。わしは腹を切るから、信忠殿も御覚悟召されよ』とうながしておきながら、自分はスティーブ=マックィーンがびっくりするような勢いで大脱走。

 『織田の源五(有楽斎の幼名は源五郎)は人ではないよ。お腹召せ召せ 召させておいて、われは安土へ逃げるは源五♪』と京童が歌うほどに馬鹿にされ、実力も発言権もなきに等しかったようです。

■以上、大河『江』第十三回現在での織田家の皆さまでした。

 …―――そりゃあ、茶々たちが『織田家が滅ぶ!!』ってあわてるのも無理はないですわな、ハイ。(ll -(,,ェ)-)




■ さて、今回もリベラルを装った歴史痛視点(蹴)での感想でしたが…いかがだったでしょうか。

 次回予告では、猿面冠者・羽柴秀吉と東海一の弓取り狸・徳川家康が激突!!そして題名はいきなり幸せな結婚生活崩壊フラグ立ちまくり。織田信長の後継者の座席、それをめぐっての最終ラウンド『小牧・長久手の合戦』が始ります。賤ヶ岳以来、久方ぶりに戦国時代らしくなりそうな展開。

 個人的には『戦国大河ドラマのくせに、びっくりするほど戦国武将が登場しない』展開をそろそろなんとか。この時点で、名前がちゃんと出てる秀吉の家臣が黒田官兵衛と羽柴秀長と石田三成くらいってどういうわけだ。今後の展開に期待。

2011年大河『江』第十四回 離縁せよ 感想と解説





■前に戻る    トップへ戻る