2011年大河 -姫たちの戦国-』   - 第十四回 離縁せよ -

第十三回の視聴率は19.2%でした。

 ここ数回は10%台半ばをふよふよとしていた数値も久々に20%近くまで回復しましたが…同じ17日夜に、赤髭も注目している『日曜劇場 ?JIN-』の放送が開始されたため(放送時間は違いますが)、これからしばらくは民放とのドラマ対決となりそうです。

先週の視聴率
http://www.videor.co.jp/data/ratedata/top10.htm

 今回は『-JIN-』が23.7%という大河並みの高視聴率を獲得。

 前のシリーズもかなりの好評を集めた名作ドラマ、また個人的には内野聖陽さん…大河『風林火山』で山本勘助を好演したあの渋い二枚目様。゚+.(゚∀゚*)。+.゚がいることもあり、また日曜日の楽しみが増えた、といった感じです。

 放送時間がきれいに一時間ずれをしている二つの歴史ドラマ。たぶん大河ドラマの裏番組になるのは避けたかったのでしょうが、JINであれば『江』と激突してもいい勝負か…-―もしくは、勝利を納めるのではないでしょうか。民法ながら、あの出来映えや治療が始まったときの緊張感がたまりません。同じ歴史モノなのになんでこんだけ差が出るか。
( ・(,,ェ)・)


 ■ さて、それでは気をとりなおして…今回も一週間遅れで大河『江』の第十四話『離縁せよ』、感想と歴史痛的補説の開始です。  前回は秀吉の魔手から姉・茶々を助けるために、織田−羽柴間の平和を守るために婚姻外交の駒になることを了承した江。

 お相手様の佐治一成は眉筋くっきりの明るい好青年、新婚初夜にぶっちゃらかすことを初めて聞かされて赤面卒倒しちゃうとか、幸せそうなご様子の三の姫様でしたが…今回は題名からしてもう物騒です。いったいぜんたい、どうなることやら。(;―(,,ェ)―)


■羽柴秀吉(岸谷五朗)withおね (大竹しのぶ)+豊臣秀次(北村有起哉)
 ・・・――いやぁあ、今週は『江』視聴を毎週楽しみにしているであろう女性視聴者の皆様から憎悪を集めまくったことは間違いないでしょう。いやはや、今週も秀吉の黒さがびっくりするほど悪党サイドでした。…―やばい、三姉妹の波乱たっぷりな展開とか初婚の倖せが見事にぶっこわされた江の悲憤なんかよりずっとずっと絵になるぞ、猿面冠者。
( -(,,ェ)-)


 前回はでは、好感度たっぷりすぎる出世物語の代名詞とはかけ離れ過ぎた秀吉像、猿知恵のまわる小悪党ぶりを賞賛しましたが…いやあ、今週からは「小」は必要なさそうです。江が偽書に騙されて大坂城に来てしまったとき、開かれる障子と共に登場した秀吉の顔ったらもうないですよ。

この城から出られても、帰る場所はどこにもありませぬゆえ。』と、いけしゃあしゃあと嘯く秀吉の顔。今までは江の後ろに織田信長の面影を見て恐れおののいていたサルとは思えない表情。

 おまけに離縁と養子縁組まで勝手に済ませているあたり、ここまで悪役を突き通されると、あんだけ(個人的には)酷評してきたファンタジー大河とは思えないほど画面に引き寄せられます。

( -(,,ェ)-)oO( 江が帰ってまいったぞー!!という最後のせりふ、何気に勝利宣言なんですよね。 )

 現代の大阪城と違い、秀吉が築いた大坂城の規模は現在より全然大きく、金箔の押し瓦できらびやかに輝いていた戦国一番の巨城。しかし、この世のものとは思えない豪華絢爛、侍女たちがその華美に目を見張った秀吉の大坂城も…三姉妹にとっては牢獄か監獄も同然。

 今回の養女縁組で江の牙はほぼ完全にもがれ、茶々の剣幕にも秀吉は動じなくなってきました。

 織田信長が去り、明智光秀が屠られ、柴田勝家が滅び、そして織田信雄が懐柔されたとあってはいよいよ、三姉妹達を庇護してきた勢力の誰よりも秀吉は強力な権力者となります。…これは私の予想ですが、次週以降…――秀吉の暴走振りはますますひどくなっていくんじゃないでしょうか。( ・(,,ェ)・)

 ( -(,,ェ)-)oO( いやあぁ、なんだか別の視点で江を楽しんでる気がしなくもない!!けど良いや、秀吉の澱みがない黒さに今夜は乾杯!! )


【大河『江』歴史物語 〜物語に隠された裏事情〜】
■やっぱりハブられた小牧・長久手の合戦。けれどそこには旧織田家臣団の凋落が。

 さて、劇中では例によって物語では刺身のツマでしかない合戦風景、小牧・長久手の合戦は綺麗さっぱり経緯だけで終わってしまいましたが…。
実はあの合戦、秀吉が家康によってこっぴどくやられただけで終わった戦いではありませんでした。

 羽柴秀吉にとってはかつての同僚、けれど今は家臣と扱うには微妙にうっとうしい元織田家の戦国武将たちがこの小牧・長久手の合戦で身の破滅を迎えていたからです。
 
 まずは、池田恒興(いけだつねおき)。

 現在『平成の大改修』が続いている世界遺産・国宝姫路城を築いた池田輝政の父親にあたる武将です。

 秀吉が織田家の後継者を信長の嫡孫・三法師と結締づけた清洲会議では親秀吉派閥だった恒興ですが、実は母親が織田信長の乳母、つまり同じ女性の母乳で育った乳兄弟の関係。

 信長三男・織田信孝が自害して果てた後は、美濃国(現岐阜県南部)最大の実力者となっていました。

 しかし、池田恒興は大河では秀吉の甥・羽柴秀次が発案したことになっていた三河奇襲作戦を実際に秀吉へ提言。

 秀吉はこの策戦を受諾、まだまだ実戦経験の浅い秀次や家臣の堀秀政を寄騎につけ、恒興を実質的な指揮官として部隊を派遣しましたが、この動きを察知した徳川家康によって迎撃を受け…勇敢な三河武士団の前にあえなく最後を遂げました。


 このとき、恒興と一緒に嫡男の池田元助が討ち死にしたため、池田家の家督は次男だった輝政に引き継がれることとなります。
 まだまだ秀吉の下風にたつ気はなかった恒興が死んだことにより、秀吉はまた一歩、信長の後継者たる地位を固めることが出来ました。

 一説によれば、恒興の奇襲作戦が失敗すると感じた秀吉はそれを承知で秀次らと一緒に作戦敢行を許可したとも。



 そしてもう一人が、森長可
(もりながよし)
 大河『江』でも初期に登場した森蘭丸兄弟の次兄にあたります。

 森一族は長可・蘭丸達の父・森可成(もりよしなり)の代から織田家に尽くした戦国武将たちで、信長からも深く信頼を受けた一族でした。

 しかし、この小牧・長久手の頃には森可成やその嫡男・可隆、そして蘭丸たち三兄弟が既に討ち死に。残っていたのは長可と末弟の忠政だけでした。

 森長可も誇り高き織田家の武将、秀吉にへこへこと頭を下げるつもりありませんでしたが…この小牧・長久手の合戦で池田恒興らとともに三河奇襲部隊に参加、やはり三河武士団を率いる徳川家康軍によって討ちとられてしまいました。

 森長可は父、兄ひとり、そして弟三人を合戦で亡くしています。何か予感するところがあったのでしょうか。

 この小牧長久手合戦に出陣する前、一族や重臣たちに

弟の忠政のことを頼む。一族の娘達は、もう武将の嫁にはやるな。裕福な町人か医者に嫁がせれば倖せになれるだろう。
 こんな悲惨な思いはもう誰にもさせたくはない。金山城
(美濃国東部にあった森一族の居城)も弟忠政には相続させず、秀吉に相談して、誰かふさわしい武将に城主となって貰え。


と、悲壮な思いを込めた遺言を残しています。尚、森忠政はその後様々な紆余曲折をへて無事戦国時代を生き延び、江戸幕府の外様大名として生き残っています。


 …―――こうして旧織田家の重臣たちが討死していく一方、羽柴秀次は味方の支援もあって無事に戻ることが出来たようですが、ほとんどほうほうのてい。
 逃げる際に家来から馬を借りようとしたら『雨の日に傘を貸すバカが居るか!!』と怒鳴られる始末。
 
(なお、この時の家来というのが後に"笹の才蔵"と呼ばれ宝蔵流槍術として知られることになる武辺者・可児才蔵(かにさいぞう)です。漫画『センゴク』でも主人公の悪友として顔を出しています。)

 討ち死にしていった武将たちの命を掛けた奮戦で助かったわりには、あまり良いあつかいはされてなかったようです。劇中では、秀吉にふるぼっこにされてましたが。




■ さて、今回もリベラルを装った歴史痛視点(蹴)での感想でしたが…いかがだったでしょうか。

 次回予告では、猿面冠者・羽柴秀吉の人物評をさまざまな武将たちがリレーしていく印象深いもの。果たして、秀吉の正体とはどういう意味なのか?

 『戦国大河ドラマのくせに、びっくりするほど戦国武将が登場しない』展開をそろそろなんとかしてほしいと思いつつ叶わなかった小牧・長久手。この調子だと、歴史Fanの皆様には人気上々である真田幸村や加藤清正、福島正則とかが顔も出さないって何なんだろう。次回あたり、チョイ役で良いからきてほしいところ。

2011年大河『江』第十五回 猿の正体 感想と解説





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