2011年大河 -姫たちの戦国-
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【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】Vol.1 with 大河『江』第二十回 茶々の恋 -

【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】
■さて、戦国大河『江』も無難に視聴率を刻み、世の中はすっかり梅雨模様。


 我が世の『戦国大名』、政治家の皆さんは福島原発も大震災の爪痕もそっちのけで『合戦』をおこそうとしてらっしゃるようですが…――皆さんはどんな顔して代議士の先生をご覧になってることでしょう。赤髭は、とりあいず『今の世の殿様も、本当に領民のこと考えてねーなぁ( ・(,,ェ)・)』と思うばかりです。

 そして、結果は開けてみれば前評判とは大違い、不信任案はなぞの大差で否決されたものの…今度は辞意を表明した菅首相が前言撤回、味方の筈な民主党に『はよ辞めろ』だの『ペテン師』だの…なんだろうこの泥沼戦国時代。


 ひょっとしたら、国民に慕われてカッコ良かった『今の世の殿様』ってのは、小泉純一郎元総理より先だと…いよいよ戦国時代の殿様までさかのぼらなきゃならんのでしょうか。
( ・(,,ェ)・)



 ちょうど本邦、今は戦国時代ブーム真っ盛り。
 ちょっとインターネットを覗けば、世の中美形と脚色で身を飾った戦国武将がきらびやかに美貌を顕示し、世の戦国時代Fanを魅了してくれます。

( ・(,,ェ)・)oO( 六本爪の生えた英語話す伊達政宗とか、ちっこい女の子化した武田信玄とか、三味線を壮絶に奏でる長宗我部元親とか。いえ、貶めて言ってるんじゃあないんですよ、一応。 )

 しかし、待ってください。平成の今のご時世にマッチするよう偶像化された戦国武将を崇敬し、あの人が素敵だとかあの武将がカッコイイというのは、確かにそれも良いかも知れませんが…
やっぱり戦国時代は闘争の乱世、本当はいろいろと事情もあれば、今日に伝わっていないおかしな事実とか顔をそむけたくなる風習もあるわけですよ。

 …――そんなヲタ知識は必要ないかも知れませんが、やはりこの『日本』という国の礎を築いてきた歴史の英雄達である戦国武将、やっぱり歪んだままの知識だけで崇めちゃいけないような気がしませんか?
(*-(,,ェ)-)



□そこで、今回は【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】の御案内です。

 古今東西、今や日本全土いろんな場所で広まる戦国時代ブームの裏通り。そこはカッコ良さと現実、恐ろしさと悲劇の入り混じった闇が広がる路地裏は、少し角を曲がり損ねると『とんでもない』知識が正統派とまかり通ってしまう不思議空間。

 そんな戦国知識の百貨店から、自称歴史痛の赤髭が『これは良い』と思った知識の案内人を紹介するのが【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】です。


 記念すべき第一回では、楽しく、ある程度の歴史的史実を踏まえた物語を学ぶことが出来る紙媒体…日本が世界に誇る『マンガ』から、これはと思ったものを紹介していきます。

■それでは、御一緒して頂ける皆さまの御時間を少々拝借。。゜+. m9っ;・`ω・´)っ 。+.゜ Time Stopper !!



 大河『江』の初期に重要人物として登場し、姪である江姫や視聴者に強力な印象を残した『戦国の覇者』織田信長


 まず最初のご紹介は、この織田信長の生涯をドラマチックに描いた、工藤かずや原作・池上遼一作画の歴史漫画『信長』から。


 池上遼一先生と言えば、『HEAT -灼熱-』や『覇-LORD-』でご存じの方も多いでしょう、緻密な人物描写に魅力があるベテラン漫画家さん。

 大人気を博した朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』でも倉田圭一(窪田正孝)名義で登場したことは歴史Fan以外の皆さまでも記憶に新しい人。
 水木しげる先生も舌を巻いたというその画力は今年で六十七歳(!?)だとはとても思えない覇気のあるタッチで、読む者の心をグイグイ引きつけます。

 そんな池上遼一先生が1986年(昭和六十一年)から連載を開始したのが、織田信長の一代記的劇画である『信長』です。
 既に四半世紀も前の作品となってしまいましたが、今読み返してみてもその内容は色褪せや古臭さを感じさせません。


 物語の大筋は織田信長の歴史を忠実に追いつつ、各所に斬新な構想を練りこんだ『信長』は、当時としてはとても衝撃的な切り口の作品でした。
 格好の良い織田信長が感情色・躍動感豊かに描かれた紙面は、具足や兜の紐ひとつひとつまで書き込まれていて…そのリアリティは今にも動きそう。

 『冷酷非情で残虐』『革新的で突拍子もない現実主義者』という、当時でも既にテンプレート化していた信長像を離れ、冷徹で理知的ではあるが人間味のある、温かな感情の持ち主である信長の横顔を描いています。

 大河『江』でも第一回の山場になっていた小谷城落城と浅井長政の死の折や、梟雄・松永久秀を最後まで許そうとし悲劇に終わった場面…そして仇敵ですらあった武田勝頼の死を見つめる信長の切れ長い目、印象的なモノローグやナレーションは狂気の第六天魔王、自らの思想のためなら他者を省みようとしない独裁者の信長とはかけ離れた、人間らしい温情を感じさせてくれます。

 そんな織田信長と、どうして明智光秀は距離を離していったのか。本能寺の変はなぜ起きたのか。終盤に激動的にながれる物語と、カッコ良い信長の生涯を漫画でご覧ください。

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◆赤髭の『ココは要チェック!!』
 連載当時にも歴史Fanに大きな影響を与えた『信長』。実は、某『戦国歴史シミュレーションゲームばっかり出してた"コ"から始まる大企業』や、そのほか多くの戦国歴史ゲームのクリエイターにもかなりの影響を与えています。織田信長のビジュアルやグラフィックはこの『信長』が起源といってもいいんじゃないでしょうか。

 歴史シミュレーションゲームに慣れ親しんだ方なら、作中の戦国武将の顔グラを見ると『おぉ?!』と感じるほどの類似点を発見出来るやも知れません。

 ( ・(,,ェ)・)oO( 『武将風雲録』の武将顔グラフィックや、ここ最近までの信長の野望シリーズでの山県昌景なんかはかなり影響受けてますね。顔の角度まで一緒ですから、そりゃあもう。)

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 なお、現在『信長』は小学館ビックコミックスから計七巻、メディアファクトリーから復刻完全版が計八巻発行されています。

 実はこの漫画、ある資料を参考にした際に著作権問題が発生し、小学館版の単行本は途中で事実上の廃刊となり、それから十年以上の月日が過ぎた2003年にようやくメディアファクトリーの完全版が発行されたという経緯がありました。

 ですので、小学館ビックコミックス版は途中で終わっています。しかし、メディアファクトリー版で修正された著作権問題の箇所以外にも信長の兜や具足が手直しされているため、古本屋などで見かけた場合は手に取って比較してみると面白いかも知れません。

池上遼一先生の『信長』は、今日の戦国歴史Fanが脳裏にイメージする、総髪で南蛮鎧とマントに身を包み背の高い戦国の覇者という格好の良い信長の基盤を築き上げたといって良い、金字塔的作品です。
 大河『江』でも江姫が半ば恋愛に近いような敬慕をした織田信長、その颯爽とした男伊達の雰囲気を、まずはこの名作で把握してみてはいかがでしょうか。



 ( ・(,,ェ)・)oO( ですが、さすがに二十五年前ともなると歴史公証を深く突き詰めると妙な箇所がないわけでもないので、正確な歴史Fanになりたい人は作中の真偽をよく見極める必要があります。
 あと、この頃の池上先生は原稿にコピーを使うことをためらわなかったようなので、似たようなコマ割が続く箇所もあり。

 それと、池上遼一先生の漫画にはよくあることですが…主人公・信長は基本的に説明不要で完璧超人です。そういう成長の伸びしろがない主人公に拒絶感がある人は要注意。 )






 さて、せっかくですのでもう一冊『織田信長』を題材にした漫画をご紹介しておきましょう。
 こちらは劇画界の大御所・さいとうたかを先生の歴史劇画『日本史探訪 戦国時代A 奇想の天才と転換の時代』です。

 さいとうたかを先生と言えば、もう説明するまでもないでしょう。今も青年漫画の連載最長記録を更新し続けている狙撃アクション漫画『ゴルゴ13』の作者さん。



主人公・ゴルゴ13の活躍場所を求めて世界中の紛争史や裏情報を仕入れ続けていたら、いつのまにかジャーナリストより詳しくてやばい知識を獲得していたというさいとう先生ですが、実はかなりの量の歴史・時代劇漫画を手掛けています。

 
戦国武将に関しては、原作ありの歴史劇画から完全オリジナルの本格歴史漫画まで、その数はここに列記できないほどに多数。

 今回ご紹介する『奇想の天才と転換の時代』は革新的思想と人並み外れた行動力、ただし人の情に薄く狂気的な一面も併せ持っているという、一般で広く知られた織田信長を主人公に、歴史を忠実に追った読み応えのある歴史漫画に仕上がっています。


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◆赤髭の『ココはチェック!!』
 斬新な描写としては、『お市の方は織田信長の愛人だった』という兄妹近親相姦説を劇画化に踏み入った点が白眉。一見すると超がつくほどトンデモナイ奇説に見えますが、実はこのことは幾つかの史料を深読みすると暗示されているというあながち大ウソとも言えない話。

 浅井長政と手を組むためにいやいや嫁に出したら、浅井家が滅んで織田家に出戻ってきたときには既にお市の方の心は長政に傾倒していた。

 『やっぱり嫁に出すんじゃなかった!!!』と苦悶の表情を浮かべるゆがんだ織田信長、実際に『こんな可愛いのが俺の妹なわけがない!!(゚∀゚)』な妹が居る方には感情移入出来・・・出来るのかなぁ、これ。(何をいまさら)

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 そんな赤髭の無駄な杞憂はさておいても…さすがに劇画作家としての経歴も円熟を過ぎて完成の域に達しているさいとう先生。

 キャラクターの立った魅力的な登場人物や彼らの織りなす話のテンポ、史実重視のストーリー展開は読む側に気を余所にそらせる余裕を感じさせない出来栄えです。

 物語に無駄やリズムの悪さがない、一時に集中できてさらっと読み通せるちょうど良い長さ。この簡潔な構図や物語構成は、赤髭もぜひ盗みたいところ。



 ゴルゴ13の印象が強い方も、一度さいとう先生の歴史系劇画を手にとってご覧になれば、歴史漫画慣れした懐の深さ・漫画としての完成度にきっと満足して頂けるかと思います。


 『奇想の天才と転換の時代』は、角川コミックスやKADOKAWA絶品コミックなどから出版・再版されています。また、さいとう先生の歴史劇画はコンビニなどの漫画コーナーに結構な確率で並んでいますので、織田信長に限らずほかの歴史漫画を見てみたいという方はコンビニを訪ねてみても良いかも。


池上先生の『信長』が、当時では型破りな感のある人間味の強い英雄的信長を格好よく描写しているのに対し、さいとう先生の信長はあくまで当時の型式通り、いわば"王道"の織田信長の生涯を描き上げた感があります。

 しかし、信長が天下に覇を唱えそれが完成に近づくにつれ狂気をまとっていく様を描ききったさいとう先生の信長もまた、戦国歴史Fanなら是非抑えておきたいところだと感じたので、今回推薦させて頂きました。


 ( ・(,,ェ)・)oO( なお、蛇足かも知れませんが…さいとう先生は劇画、青年誌で長年活躍されて来た方ですので、その内容は大の大人向けに仕上がっています。

 この本の表紙にもいきなりお市の方の濡れ場が映っているあたり、当然ですが小さいお子様などの歴史教育に用いるにはちょっと不健全かも。 )





 では、今回の最後の紹介となる漫画を。


 こちらは前掲二作とは違って比較的新しく、少年誌で大Hitを記録しただけあってご存知の方も多いのではないでしょうか…宮下秀樹先生作の本格歴史漫画『センゴク』です。


 『槍は、突くもんだと思っちゃならねえぞ。敵を叩き伏せなされい(雑兵物語)』、『合戦上で一番犠牲者を出す兵器は、足軽の弓』など、戦国時代の常識をふんだんに取り入れ、作者独自の新説を大胆に取り入れながらも『全ての常識を覆す超リアル戦国合戦譚』を展開していく戦国時代を舞台にした人気漫画。

 主人公の仙石秀久を『戦国史上最も失敗し、最も挽回した男』として主人公に据え、織田信長や羽柴秀吉はもちろん、武田信玄や上杉謙信といった敵陣営の好敵手までも魅力的に描写しています。


 仙石秀久といえば、大河『江』でも先ごろ終了した九州征伐で先遣隊の軍監(司令官)として長宗我部元親・十河存保といった四国にゆかりのある武将達を指揮し、その諫言も聞かずに島津軍に無謀な攻撃をしかけてぼろ負けしたことで知られる人物



 赤髭も熱烈なFanである三好長慶および三好一族のごひいきさんや、長宗我部元親Fanには悪夢というか御家滅亡の原因を引き起こした元凶である仙石秀久だけに、彼が主人公、というだけで敬遠してきた戦国歴史Fanの方もいらっしゃるのではないでしょうか。


 しかし、読んでみるとこれが大変な食わず嫌いであることを認識せざるを得ません。



 戦国時代の常識を覆す!!と号するだけあって、今までの歴史漫画にはなかなか見られない、けれど史料などから忠実に則っている斬新な人物像が魅力的に光ります。


 そして当時の具足や戦術、最前線に赴く雑兵たちの心理をわかりやすく、深く描写している点は確かにここしばらくの歴史漫画には見られなかった長所でもあります。

 そして、そう言った歴史痛のオタ知識になりがちな詳細の歴史考証が無理なく、楽しみながら得られるという点も優秀なところです。まさしく、【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】にふさわしい漫画と言えるでしょう。

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◆赤髭の『ココはチェック!!』

 戦国時代の歴史考証を詳細に、これまでの常識を覆すという宣伝文句が示す通り『センゴク』ではこれまでテンプレート化してきた戦国武将の雰囲気や常識に真っ向から挑戦しています。

 自らの野望のためには他者の死も厭わない冷酷非情な明智光秀右手の指が六本ある好色でお調子者かつ貧弱な羽柴秀吉
そして美形でもなんでもない、どもり癖と巨体と気弱な性根の持ち主である浅井長政。

 池上遼一先生の『信長』があった時代から連綿と一般に広がっていた戦国武将のイメージをみごとに粉砕し、再構築しているのは見逃せない魅力のひとつです。


っと、忘れちゃいけないのが『超がつくほど優秀な斉藤龍興』、典型的な一大宗教勢力の教祖である本願寺顕如も見逃せません。

 これまではバカの代名詞のように思われていた斎藤龍興のカッコよさ、滅びゆく朝倉家にも御家を懸命にささえようとした若き武将たちがいたことなどは、
戦国歴史Fanを自認する皆様でも一発で印象が変わってしまう。『センゴク』にはそういった魅力もあります。

 あと、『戦国武将を姓名ではなく 姓+通称+名 でいちいち表記する』というのもセンゴクならでは。今までは興味があったけど調べるのが面倒だった戦国武将の通称が、漫画を楽しみながら身に付くのもこの漫画の特徴です。

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 『センゴク』は講談社より単行本全十五巻、物語は朝倉家・浅井家の滅亡と小谷城の陥落、そしてお市の方が信長の元に戻ってきた時点で終わっており、続編は週刊ヤングマガジンにて『センゴク天正記』として連載中。


 大河『江』では印象が薄かった、織田信長vs本願寺顕如の石山戦争が火花を散らす情景をこれまた正確緻密に描き、どこからどうみてもチェ=ゲバラな雑賀孫一が織田家を火縄銃で翻弄している真っ最中。


■戦国歴史Fanをある程度自認する紳士淑女の皆様ならば、一度は感じたことはあるでしょう『もっと戦国時代のコアな歴史を学びたい、けれど専門用語や活字ばっかりの分厚い本には興味が無い。けど知識は知りたい。』という欲求。


 この『センゴク』はそういった知識欲・好奇心旺盛な戦国歴史Fanの皆様の心をぐっと掴むこと間違いない作品です。




 ( ・(,,ェ)・)oO( さて、この『センゴク』ですが…戦国時代の常識を覆し、リアルで斬新な説をドラマティックに漫画化していくという流れは『センゴク』の初期〜中期こそは濃厚なのですが、終盤になってくるとその風潮が薄れ、リアルな戦国武将たちのストイックな合戦場面や知恵比べといった点に要点が置かれるようになります。

 続編である『センゴク天正記』ではコアな戦国知識の出番はかなり薄くなっていますので、そういった点に期待している人は読み方を考えたほうがいいかも。 )




さて、【大河『江』と戦国歴史を楽しく学んで理解するシリーズ】第一回はまず画と文でわかりやすく戦国時代を楽しもうということで、戦国時代を舞台にした歴史漫画を紹介いたしましたが…いかがだったでしょうか。

 池上先生の信長が『今日のカッコいい信長の基礎を築いた信長』であり、さいとう先生の信長が『歴史に刻まれた功績とその闇にある狂気を体現した信長』ならば、宮下先生の信長は『歴史に忠実な戦国物語での信長』という新しいジャンル。


 どの信長が今の世代の心に響くかは赤髭にもわかりませんが、戦国時代を代表する覇者・織田信長とその歴史を追っていくなら、いずれも目を通しておいて損はないと思っています。

 次回も自称・歴史痛(歴史通ぶってる痛い人、の略。何をいまさら)の赤髭がこれまで目を通してきた無駄に多い資料書籍のなかから、さらに厳選して…今度は史料集やエッセイなど、戦国時代の歴史をわかりやすく紹介しているものを御案内出来ればと考えております。

 次回の当ブログ更新に御期待ください。( -(,,ェ)-)





 ■ それでは、今回も毎度一週間遅れで大河『江』の第二十話『茶々の恋』、感想と歴史痛的補説の開始なのです…が。

 今回も大坂城と舞台にした恋物語的展開が大半を占め、先週に引き続きこれまた歴史痛的においしいと思ったポイントをピックアップすることが出来ませんでした。


 赤髭は文章を見てもご覧の通り、判で突いたような典型的歴史痛ですので、ナントカと秋の空とか人心の機微を嗅ぎ取る自信があるわけなんて、当然ありませんが―――…。


 確かに今までさんざん、回数を重ねて告白じみたことや格好つけを繰り返してきた秀吉があったとはいえ、あんだけ前の回に念を押してきた両親の敵に対して『力づくで、無理にでもがモノにしたいと思わないのか!!』的な訴えをされても…いくら秀吉が信長の血を引く女性に執着があり、惹かれる性質だとは言え興醒めなんじゃなかろうかと。

 しまいには『諦めるってことは根たりないんだろ?』という結論。これは…んー、どうなんでしょう(汗。


( -(,,ェ)-)oO( ちなみに、私が秀吉・茶々の大坂最後の密会シーンのくだりを見て思わず口にしたのは『勝手な…』でした。たぶん素直にそう思ったからでしょうなぁ )


 秀吉が茶々の挙動や、自分の顔に張り手をかました心理が本気でわからないという描写も少々小首を傾げました。

 
確かに秀吉には、茶々はあんだけ言い寄っても『仇敵なんか大キライだ』の一点張りで…自分にやきもちをやいてるとは露とも感じないかも知れませんが…。


 あと、万里小路(までのこうじ)家に織田家の姫君を嫁に出しても、秀吉はちっとも得をしない。という石田三成の言葉はちょっと語弊があります。

 仮にも太閤秀吉がその結納の手はずをしたなら、少なくとも堂上家に数えられる藤原氏の名家・万里小路家と豊臣家の親睦を深める効果があり、当時は菊亭晴季と近衛龍山以外は仲の良い公家もいなかった秀吉には決して悪い話ではないはずです。


 豊臣秀吉が開催した北野の大茶会の話、そして九州征伐後の九州国人一揆に関する話がチラと出ましたが…何せその国人一揆を裏で支援していたとされる島津一族が総領・義弘以下、顔も出さなきゃ名前も出ないし・・・この一揆が原因で腹を切った佐々成政もお市の方のナレーションで『滅んだよ?』という扱いだった以上、話を持ち上げようにもいかんとも出来ず。( -(,,ェ)-)


 歴史痛のアンテナとしては…『秀吉がおね相手にぐちぐちと恋未練を話していた寝室に、豪華な天蓋つき金箔張りベッドがあった』という点がわずかに動いた程度でしょうか。

 九州征伐前に大坂城へ訪れた大友宗麟が、得意満面の秀吉に大坂城内を案内された際、寝室にそういうベッドがあったということが史料にも残されています。


 姫達の戦国、はべつに槍も火縄銃も合戦場も必要はありません。

 
将軍というただ一人の男性の寵愛をめぐって繰り広げられた女性たちの戦いを描いた『大奥』シリーズも、よく考えてみれば江戸城内だけで展開されてましたし…よぉーく考えれば、大河『江』もこれを踏まえれば、加藤清正やら真田幸村やらは必要ないのかも知れませんが…。


 …―――( ・(,,ェ)・) たまには、男も頑張ってるんだよという意味で出番を譲ってくれたって言いじゃないかッ(愚痴で〆た


 さて、次回予告ではいきなり茶々に秀吉の子供が出来ちゃった!!?とかいう赤髭にもビックリな急展開が。

 豊臣秀吉と茶々に子供が出来たということは、話は一気に1589年(天正十七年)まで繰り上がるということなんですが…やっぱり話は大坂城中心に動くのか。それとも茶々はいよいよ『あの城』に引っ越して、みなさんも聞きなれた『あの名前』になるのか。


 『母は、猿のややなど許してはいない!!』『姉上を許さない!!』と、怒りで我を忘れている江姫から熱気を忘れさせてくれるのは颯爽たる豊臣家の貴公子か、それとも侘びさびの空間の支配者・茶聖・千利休か?次回の物語はどうなることやら。

2011年大河『江』【大河『江』と戦国歴史を楽しく学べるシリーズ】Vol.2 with 大河『江』第二十一話 豊臣の妻 感想と解説





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