2011年大河 -姫たちの戦国-』   
戦国歴史をリアルに楽しく疑似体験するシリーズ】私をイクサに連れてって Vol.1
 with 大河『江』第二十三回 人質秀忠


【戦国歴史をリアルに楽しく疑似体験するシリーズ】私をイクサに連れてって Vol.1【前準備編】

■ さて、当ブログでも赤髭がしつこいくらいに強調・賛美し、実際に今日本中で様々なメディアで人気を博している一大流行といえば…――今さらクイズにもならないでしょう、ご存知『戦国時代ブーム』。

 これまではどちらかといえば特定範囲内での流行、コアでディープな趣味でしかなかった戦国武将や戦国時代が一躍世間の脚光を浴びていますよね。

 戦国武将に関する観光地は若い年齢の観光客で沸きかえり、戦国大名グッズが飛ぶように売れるという…『平成不況』という言葉をものともしない熱い流行、まだまだその隆盛にはかげりが見えません。

 戦国時代のいったい何が今の平成の若年齢層を惹きつけるのか、それは自他共に認める若年寄の赤髭にもよく分かりませんが、あえて分析するなら…


 それは、世界に冠たる経済大国に発展したはずの日本が忘れてしまった闘魂や、もともと負けず嫌いだった日本人の闘争本能を思い起こさせる…――日本の覇権をめぐって、数多の群雄たちが火花を散らして争ったという、血沸き肉踊るようなホットでエキサイティングな時代であったことが要因なんじゃないかなぁ、と考えています。



 戦国時代、十六世紀には『太陽の沈まない帝国』イスパニアに匹敵する火縄銃装備率を誇り、その侵略を許さなかった戦闘民族であったはずの日本人も、今やその気質は絶滅危惧種。

 他国に領土を不法占拠されても『遺憾だイカンだ』としか言えず、『日本人は安全と水はタダだと思っている』だなんて揶揄されるほどのなまくらぶりです。

  実際、つい最近まで自衛隊ですら命のやり取りの可能性がある地域に行くこともなかったんですから、お国を守る自衛官の方々にゃあ申し訳ありませんが、それは戦国武将の勇敢なオットコマエ振りに若人が熱狂的なあこがれを抱くのも致し方ないじゃないかなって考えるわけですよ。m9っ;・`ω・´)



 そこで、今回赤髭が御案内する企画が【戦国歴史をリアルに楽しく疑似体験するシリーズ】。

 今の日本人がきれいさっぱり忘れかけている闘いのワンダーランド(おまいは辻よしなりか)、戦国時代の合戦現場に皆さんをご招待。赤髭が無駄に備えた戦国知識を駆使して、平成現代の若い戦国Fanが強い憧れを示す乱世がいったいどんなものなのか、それを楽しく学んで疑似体験して頂くコーナーです。

  何、そんな疑似体験なら今のご時世、美麗な3Dポリゴンで創造された某・無双なゲームでいくらでも出来る、ですって?…―――何をおっしゃる兎さん。


 自他共に認める戦国歴史痛である赤髭がご案内するからには、そこは当然…無駄にそろえられた真贋嘘ホントがごった煮になった知識を駆使して、なるべくリアルで時代考証に沿った内容で戦国乱世の合戦場、その真実をご案内するつもりです。


 当然、戦国武将ではなく一介の雑兵として…――戦国歴史ゲームやドラマでは教えて貰えない真実の光と誤解の闇も仔細もらさずご案内させて頂きます。

 題して、『私をイクサに連れてって』。今回はその序段として、戦場に赴く前の雑兵としての心構えや展開についてご紹介いたします。


■それでは、御一緒して頂ける皆さまの御時間を少々拝借。。゜+. m9っ;・`ω・´)っ 。+.゜ Time Stopper !!




【第一話 戦国時代にもあった、赤紙召集令状】

■さて、それでは皆様はただいまより、平和ボケした平成日本の住民から一転、戦国時代にタイムスリップ…――ある貧しい地域の寒村に籍を移して頂きます。



 働けど働けど暮らしはちっとも楽にはなりません。長引く戦乱の影響で皆さんの主収入である米の相場は不安定で、治安も平成日本とは比較にならないほど劣悪です。

 近所の大名が合戦を起こせばその軍勢が村の田畑を襲撃し、そうでなくても心細いお金や米を容赦なく略奪していきます。攻撃した軍勢が武田信玄率いる甲斐武田の騎馬軍団であれば、奪い取る対象は米やお金に留まらず、家畜や人間にも拡大します。



 もしあなたに綺麗な奥さんや美しい姉妹があるなら、またご自身が輝かしい美貌の持ち主なら、野卑な山賊や落ち武者に身柄を拘束され、あーでもないこーでもない目に遭い果ては奴隷として売りさばかれます。

 まったく、平和のヘの字も見当たらない…世界に冠たる平和大国・日本の前世とは思えないような時代です。




□ さて、そんな環境の中でも健気に頑張っていたあなたの元に、村の村長さんから使いが来ます。その用件とはずばり、

明後日、ここの殿様が合戦を起こすらしいから…足軽としてそれに参戦してくるように』。


 …――分かりやすくいえば、召集令状です。




実は戦国時代、戦国武将が村村に足軽を徴用する場合、村の若者総出なんていう無理難題は言いませんでした。

 
村は徴兵を命じられると、村の代表者がどのくらいの年齢層をどのくらいの人数出すかを計算して決めていたのです。



 これは、村の男達を総出で出兵させたら、村を自衛する軍事力がなくなり野武士や盗賊に襲われるとひとたまりもなくなったり、農作業に必要な男手がまったくいなくなってしまうためです。


 戦国大名は領土だ何だといっても、そんな下々の民百姓の身の安全まで守ってはくれません。農民であっても武装して、自分の身は自分で守らなきゃいけませんでした。



 あ、言っておきますが『拒否権』はありません。


 どうしても嫌ならイヤだ!と言い張ることも出来ますが、そうするとほぼ確実に『村八分』…――あなたは村のはみだし者として共同体の一員たる資格を失い、今後は村人やお隣さんからは一切の協力を得られなくなります。


 何、『それなら隣町にでも引っ越せばいい』?


 ふむふむ結構。

 けれど、隣町にはあなたが合理的合法的に暮らせる場所はどこにもありませんよ?



 隣の芝生は真っ黒の消し炭なのが戦国乱世。よそ者が勝手に来て住み着くなどしては地元領民に敵視され、それこそ殺されかねません。

そんな余計な厄介者を養う余裕は戦国乱世の疲弊した状況では、どこにもないのです。


 足軽になるのを断ったら、待っているのは一家野垂れ死にか犯罪者になるだけです。

 他人が困ろうが死のうが知ったこっちゃないと割り切れる自己中心的のきわみみたいな性格でないなら、諦めて戦場に出る支度をはじめてください。



□ おう、○○殿(あなたの名前です)。今回はとうとう、足軽におびが掛かったんだってな。


■ 足軽としての出兵が決まり、途方に暮れているあなたの元に一人の老人武者が訪ねて来ました。

 彼の名は七梨の権兵衛(ななしのごんべえ)
  すでに六十の坂が迫りつつある、戦国時代では立派な後期高齢者です。



 …しかし、彼は足軽として戦場に出てからこの道四十年という超ベテラン。

 
あなたが今回、初めて戦場に出ることを知って心配になり、いろいろお節介を焼きにきたようです。



まぁ、今回が最初だとは村長から聞いている。

 判らないことだらけで苦労もするだろうから、こたびはこの儂が貴殿のお目付け役を仰せつかったということだ。

 …――わしももう若くはない。この戦が最後のご奉公となるだろうから、お前さんに戦場での心構えや常識をけてしんぜよう、コホン。




【今回のくえすちょん】
□ さて、これからお前さんは戦場で働く足軽として殿様の軍勢に加わるわけだが…――お城に行く前に、ここで出来る下準備はいろいろとあるのじゃが…。

 まず最初の確認じゃ。

 お前さん、食べるものや飲むものについてはきちんと準備しておるかな?しておるとすれば、どの程度まで出来ている?



@ 兵糧は殿様から貰えるはずだし、特にこれといって準備はしていない。

A 何も持たないのはまずいと思ったから、とりあえず塩と味噌だけは準備している。

B 食べ物はあっちでどうにかなるだろうから、水だけは水筒に詰めておいた。


■さて、あなたはどの項目に当てはまりますか?各項目をよく考えて、権兵衛に答えを聞いてみましょう。



【@ 兵糧は殿様から貰えるはずだし、特にこれといって準備はしていない。】


           10点じゃ。

 …――お前さんは、戦場へ死にに出向いていくのかね。

 まぁ、これが初陣だし仕方がないとは思うが…――殿様がきちんと、毎回毎回足軽たちが飢えないように兵糧を準備できるのは、実はそうよくあることではない。

 一日二日で終わるような合戦の場合は『手弁当』といって、食料を足軽各自が準備しておかねばならん場合もある。

 それに、いざ合戦が始まれば兵糧を乗せた荷駄隊は足が遅いうえに食料を積んでいるゆえ、一番に標的とされる。これを防ぐのも大将の器量じゃが、まぁいうて悪いがそんな芸当が出来る武将はおらん。

 戦場は飢饉だと思うてかかるのが肝要じゃ。

 
いざとなったら何でも食うくらいの心構えが必要じゃぞ。



【A何も持たないのはまずいと思ったから、とりあえず塩と味噌だけは準備している。】




       ふむ、30点というとこかのう。

 初陣にしては良い心がけじゃ。

 
戦場での働きというのはこれから体験して貰うが、これがまた相当な重労働じゃ。おぬしの体を見れば、言うに悪いが鍛え方がまだまだじゃの。くたくたのへとへとになるのは想像に難くない。


 そして、そうなればおそらくは大量の汗をかくじゃろうが…この汗をかいてくたびれた体を回復させるのにもってこいなのが、塩と味噌汁なのじゃ。



 ところが、味噌と塩というのは兵糧と違って『五人で五合』『十人で一升』など、複数人数で分けなければいけないような分配方法で配られる。

 今回が初陣であるおまえさんには悪いが、下手をするとひとかけらも手にはいらん可能性があるのじゃ。


 合戦で味噌と塩が切れるのは、下手をすると米がきれるよりくたびれる。

 
命を惜しむならば、その二つは必ず戦場に持っていく心がけをするがよかろう。




B食べ物はあっちでどうにかなるだろうから、水だけは水筒に詰めておいた。



     ほう、それなら50点はやれるかのう。

 ふむ、そこでよく飲み水に気がついたな。
実は合戦場でいちばん確保が重要で、それなのに手に入りにくいのが水なのじゃ。



 合戦が起きると、防衛側の軍勢が最初にやることが『敵に自分たちの水の手を利用させない』ことじゃ。

 敵の手に落ちそうな井戸があれば『だら』(人糞)を放り込んで使えなくする。もし敵が乾きに耐えかねてその水を飲めば、まぁ間違いなく中毒を起こすじゃろう。


 中毒になると下痢が酷くなり、大量の水を体から吐き出すことになる。そんなへろへろの有様では、戦になる前に命を亡くしたも同然ともなろう。



 川があれば、敵が渡河するだろう上流あたりに人や牛馬の屍骸でつくった小さな堰(ダム)を作る。知恵の回る武将であれば毒を流したりもするじゃろうな。これもまた、何も知らずに飲めばほぼ確実に腹を壊す。




 よしんば、無事な井戸や川、泉をみつけたとしても…その水があやうい。

 国が変われば水も変わる。よそ者が飲めば体に合わず、胃腸をくだすものもあるだろう。



 そうならないためにも、生まれ故郷の水を持っていくことはとても重要じゃ。

 敵国の水であっても、故郷の水田から採ってきたタニシの身を乾かしたものを漬けこんで、そのうわずみを飲めば腹を壊さぬというし、

 杏の実の芯にある白くやわらかいもの(杏仁)も水の解毒に使えるという。戦の場数を踏み経験をつんだら、そういったものを揃えるのも重要じゃぞ。
 
 



□ まぁ、記念すべき第一問でいきなり変則的な解答じゃが、正解は『AとBの両方』じゃな。

 それでも百点満点にならぬのは、心構えの良い武士はさらに保存食を自作して、合戦に持っていくことがあるからじゃ。


 それを備えておけば、体調管理において戦場で敵に遅れをとることはないであろうからの。初陣を迎えたばかりの経験に劣る若いもんには、それを持参・作っておくというところまで知恵は回るまい。八十点貰えれば合格とみるが吉であろう。

 次回は、その保存食についてお前さんに説明してやろう。…――今回はわしが準備しておいたそれらを貸してやるゆえ、城に向かう道すがらにでも話すとしよう。



■ さて、【戦国歴史をリアルに楽しく疑似体験するシリーズ】、その第一回をお届けいたしましたが…いかがだったでしょうか。

 次回は前準備編の第二部、戦場に出向いていく足軽が備えるべき非常食やその作り方、使い方などについて権兵衛がレクチャーしていく予定です。

 米のおにぎりばかり食べていたと思ったら大間違い、戦場で働く足軽たちは現代人の我々から見ても非常に合理的で、驚くべき真髄を備えた栄養食を準備していたのです。

はたして、その戦場料理の実態やいかに?次回の当ブログ更新に御期待ください。( -(,,ェ)-)






 ■ それでは、今回もいよいよ当ブログでの扱いがコンビニの箸のつまようじ以下になりつつある大河『江』の感想&与太話、その第二十三話『人質秀忠』について徒然とお話していきたいのですが…。



 前回当たりから小首を傾げていたのですが、豊臣政権での権力争いが急に物語上で表面化してきた向きが感じられます。

 今のいままで江たち三姉妹を中心にした悲喜こもごもなファンタジー大河だったのが唐突に戦国武将達の権勢争いへスポットを向けた、というべきでしょうか。
( ・(,,ェ)・)oO( 喜ばしい展開なんでしょうけど、なんでこんなに素直に喜べないんだろう。 )



 …ついこないだまで、ハンガーストライキを決め込んでる三姉妹に『焼き蛤の匂いを嗅がせる』とかいう馬鹿そのものな作戦を敢行していた石田三成(萩原聖人)が(まぁ、歴史通りなのですが…)唐突に官僚派の筆頭に相応しい黒さを滲ませるようになりましたし…

 今までは頭が切れるのかどうかよく判らない扱いだった…人生最大の見せ場かつ失態でもある本能寺の変のときですら道化扱いだった黒田官兵衛(柴俊夫)が急に策師として描写されたり、いまいち物語の筋道がよく把握できません。


 徳川秀忠(向井理)の感情色が乏しい冷徹な性格も、今のところ江(上野樹里)とどうスイングするのか予想がつきませんが…――赤髭はこの、世の中を醒めた目で見据えて、徳川家康ですらどこか冷たい蔑視で眺めている秀忠という人物像は割りと新鮮で良い気がします。



 将来的には結局『武士政権で最高の二代目』に成長する秀忠ですが、この石田三成と向こうを張れるようなニヒリズムあふれる若殿が今後どのように成長し、江とどのような関係になっていくのかが密かな楽しみになりそう。

 逆に、残念だったのが…まぁ、ある程度予想はしていましたが、北条氏政(清水絋治)と北条氏直(岩瀬亮)の早過ぎる退場でしょうか。

 ここ最近では随一と言ってよかった、戦国大河らしい画面の引き締まりを見せてくれた相模北条家最後の武将達も、石垣山一夜城に驚愕したまま、あっけない幕切れを迎えてくれました。



 赤髭的には、もっと『小田原評定』とか、石田三成が智略を尽くした水攻めを敢行し、そして最後まで良い所がまったくなかった忍城攻防戦なんかも…10分とは言いません、5分は貰えればこの『豊臣秀吉の天下統一事業最後の一大決戦』がもっとあざやかになったんじゃないかと思うわけで。



 ところで、小田原城に白装束と決死の覚悟でやってきたはずの奥州王、

独眼龍こと伊達政宗殿はどちらにいらっしゃったでしょうか?



 ひょっとしたら赤髭、トイレとか余所見してる間に見逃したかも知れないんですが…―――

 いやぁ、まさかそれはないでしょう。

 幾ら大河『江』がアレだって言っても、奥州の独眼龍にまったくノータッチだなんてそんなトンでもない脚本を書くはずがn…――。


 …―――えっ、本当にてなかったんですかッ!!? Σ(;・(,,ェ)・)



…――まぁ、その…なんと言いますか…あぁ、あれです。
流石、予想通りに歴史をトレースしない大河ドラマ様だとしか…(泣。

2011年大河『江』【戦国歴史をリアルに楽しく疑似体験するシリーズ】私をイクサに連れてって Vol.2【前確認編】 with 大河『江』第二十四回 利休切腹 感想と解説





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